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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/11/06

今年も正倉院展にヤツガシラ

 
今年の正倉院展はヤツガシラが何羽見られるだろうか。

紫檀木画槽琵琶(したんもくがそうのびわ)の槽  正倉院南倉 
同展図録は、槽はシタンの三枚矧ぎ、象牙・緑染めの鹿角・シタン・ツゲ・コクタン・ビンロウジュ・錫などを用いた木画によって華麗に装飾される(緑角や象牙の一部は新補)。中央の白蓮華を取り囲むように、錫の点線による茎で繋がれた蓮華・宝相華・捲き葉からなる花葉文で飾り、さらにその周囲に、花綬をくわえるオシドリ、ヤツガシラ・カモ・サンジャクなどの鳥を左右対称に配し、上端に胡蝶、下端に山岳をおくという。
ここにも三枚矧ぎという合板技術が使われている。合板についてはこちら
この琵琶には4羽のヤツガシラが飛んでいた。嘴の緑染めの鹿角は左上の1羽にしか残っていない。 斑犀把緑牙撥鏤鞘金銀荘刀子(はんさいのつかりょくげばちるのさやきんぎんそうのとうす、小刀) 全長17.9鞘長13.2 正倉院中倉
鞘は撥鏤技法で装飾された象牙製とする刀子。撥鏤は染めた象牙の表面を撥彫し、象牙の白い素地を表すことで文様を表現する技法である。本品の鞘は縹色に染められ、全面に草花・花喰鳥・ヤツガシラやオシドリなどの鳥・蝶などを表し、文様の随所に赤色をさしているという。
ヤツガシラは鞘のてっぺんにいた。銜えているのが植物ではなく蝶なので驚いたが、ヤツガシラは虫を食べる鳥らしい(「日本の野鳥」より)。
正倉院宝物でヤツガシラを見ると、飛んでいるものばかりで地面におりたヤツガシラは見たことがない。珍しい図柄だろう。
今まで数回ヤツガシラを見かけたが、こんなに足は長くなかった。足を長く描いたのは、当時もヤツガシラは日本にいない鳥だったので、工人の想像だろう。
前回のヤツガシラについてはこちら 緑牙撥鏤把鞘御刀子(りょくげばちるつかさやのおんとうす) 全長18.7鞘長14.0 正倉院北倉
鞘・把とも象牙を紺色(古代における緑色の範囲は広く、今日の紺色も含まれていた)に染め、全面に撥鏤技法で文様を表した刀子である。鞘は花卉文・蝶・鶴・含綬鳥・花喰鳥・雁・孔雀を、把には草花文を表し、文様の随所に赤色を点じているという。
この鳥はヤツガシラではないのだろうか。解説には花喰鳥となっていて、ヤツガシラの文字がない。ヤツガシラにしては冠羽が小さいが、他にこんな冠羽を持つ鳥はいないのでは。この鳥が銜えているのは大きな花枝だが、バランスを取りながら地面を歩いているように見える。足が短いのでヤツガシラかも。
それから、ヤツガシラではないが、この刀子には変わったものを銜えて飛ぶ鳥が2羽描かれているのが気になった。含綬鳥というらしい。花喰鳥とともに流行した含綬鳥は、綬帯(菩薩などの身に着ける帯状の装身具)、瓔珞(仏像の首や胸にかける装身具)などをくわえた鳥の意匠という。
2羽そろって同じものを銜えて飛んでいるので、耳飾りかと思った。このような田の字形の三方にだんだん小さくなる玉の垂飾をつけた装身具は、中国にも韓半島にも、どこにも見かけたことのない、珍しい形だ。
刀子は実用の文房具であったほか、貴顕が帯から組紐で下げて佩用する装身具でもあった。
斑犀偃鼠皮御帯(はんさいえんそひのおんおび)に繋着された「小一口 緑牙撥鏤把鞘金銀作」に当たる。この帯は偃鼠(もぐら)の革に斑犀製の飾りをつけていたと考えられ、本品を含めた6口の刀子と訶梨勒(かりろく、薬物)を入れた袋を繋着していた
という。
当時のペーパーナイフやなあと思ったが、NHKの『日曜美術館』(だったと思う)が、書き損じた場合に削る道具と解説していた。
帯に組紐で下げていたとは日本風の腰佩やね。腰偑についてはこちら オシドリをはじめ、日本にはいろんな種類の鳥がいる中で、ヤツガシラは日本にいない割に正倉院宝物にはたくさん描かれている。唐文化へのあこがれなのだろうか。それとも珍しい鳥だからかも。

今年は6羽でした。

※参考文献
「第61回正倉院展図録」(奈良国立博物館監修 2009年 財団法人仏教美術協会)
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(1985年 山と渓谷社)