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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2010/04/09

世界のタイル博物館4 バラツキを再現するのは難しい

 
『ゆらぎ モザイク考』の<「バラツキ」と「ゆらぎ」のあるモザイク>で後藤泰男氏は、紀元前3500年ころ、文字を発明したことで知られるシュメール人は、メソポタミアの古代都市ウルクに円錐形のやきもので表面を装飾した円柱と壁を構築しました。この表面から見ると円形のやきものによる幾何学的なパターンは、人類が最初にデザインしたモザイク文様として知られていますという。
ウルクのクレイペグ装飾壁(復元図 出典 A.Noldekeほか:ウルク発掘調査概報第4集図版8)ではかなり高い壁面となっている。  この壁の実物は、ドイツの考古学隊によって発見され、現在はベルリンの「ペルガモン博物館」に展示されています。
円形の幾何学パターンとして描かれたジグザグ模様やひし形模様は、波や大地を表しているという研究結果もあ
るという。
三角はさざ波、横のジグザグは大きな波、そうすると菱形は大地だろうか。舗床モザイクなどに興味を持っていた頃はこれがモザイクと言われてもピンとこなかったが、今では確かにモザイクに見える。 これを見て、ジョーンズが「秩序と混沌」と表現したこのバラツキの再現こそが、復元に最も重要なポイントであると私たちは考えました。基本形状を底面の直径20㎜で高さが108㎜の円錐形としながらも、形状と大きさにバラツキを持たせながら復元していきます。
しかし、しばらくして職人たちが一定のリズムを持ち出すと、乾燥台の上にはまったく同じ形のペグが並びはじめました。
施工の職人たちにも、復元ポイントはバラツキであることを伝え、「5000年前の人たちになったつもりで施工してほしい」とお願いしました。意図することは理解していただけるのですが、いつも綺麗な仕上げを求められてきた彼らにとって、バラツキが必要なことはわかっていても体が動いてくれないようでした。 
「ペルガモン博物館」に展示されている本物の壁に比べると、ジョーンズが評した秩序と混沌の両極端が存在するといった荒々しさはないかもしれません。しかし、適度にバラツキを持ったクレイペグに落ち着きを感じているのは私一人ではないと確信しています。この適度にバラツキを持った表情を「ゆらぎ」と表す人もいます
という。
実際に見ていて浮き出たところやへこんだところが確かにあった。しかし、それが意図的に施工しないとできないものとは思わなかった。熟練した工人の技術はすごい。
そう言われると両側が幾何学的な文様に埋め尽くされた空間にいても圧迫感はなかった。それは直線や鋭角なものが丸い形からできているからだと思っていた。 当時も入手可能であった酸化鉄とマンガンで赤や黒に着色し千度の温度で焼き上げましたという。
白と赤と黒(青に見えた)の3色がバラツキによって生じた陰影で、もっと多彩に見えたのかも。

※参考文献
「ゆらぎ モザイク考-粒子の日本美」(2009年 INAX出版)