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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2013/11/15

第65回正倉院展4 華麗な暈繝 



漆金薄絵盤(香印座)では、暈繝による色のグラデーションが至るところで展開する。
前回までに見てきた各蓮弁の内区の文様もそうだが、1段目の枠には矢羽根形暈繝彩色が見られる。
また、植物の葉にも。
そして宝相華のような文様に、も暈繝と呼ばれる色のグラデーションが見られる。
『第65回正倉院展目録』は、蓮弁の内側には、雲形あるいは花弁形を連ねた2種類の文様を表しており、青系と赤系、緑系と紫系の暈繝彩色を組み合わせた配色は、平安時代に「紺丹緑紫」と呼び習わされた暈繝彩色法の先駆となるものであるという。
外が青系の蓮弁。
外側の朱と黄色の縁に続いて、水色・青・紺・濃紺の4色、花弁形のところで朱の輪郭線に続いて白・黄・橙・赤橙・丹、その内側の広い面積を占める白色の内側に黄・黄緑・緑・緑青・深緑とそれぞれ青・赤・緑のグラデーションになっている(色の名前は自分で勝手に付けています)。

また、このような暈繝による彩色は正倉院宝物にはよく見られる。

彩絵長花形几 さいえのちょうはながたき ヒノキ 長径65.4短径45.0高9.0 中倉
同書は、仏に献納する品を載せるための机ないし台。
天板は全体を長八稜形にかたどり、各稜間はさらに2箇の刳り形を設けた華麗な形状である。表面は中央部を素木のまま残して周縁部を白色に塗る。裏面は白緑を塗るという。
天板には同じ形に作った褥が載せられていて、その色調が地味なため、几も地味に見えるが、横から眺めると、華足の形と共に色彩のグラデーションが映える作品だ。
側面は濃紺・青(群青か)・薄緑(白緑か)及び白の4色を並べる暈繝帯とし、各稜の左右に赤系暈繝で四弁花を、また2箇の刳り形の上下にやはり赤系暈繝で覗花文を描いている。
華足は葉状にかたどられ、群青・蘇芳・朱・黄土・白緑・緑青などの色料を用いた華やかな暈繝彩色が認められるという。 
白緑(びゃくろく)とはどんな色だろう。和色大辞典で調べると、華足の群青と白の間に付けられた色のことをいうらしい。


花喰鳥刺繍裂残片(部分) はなくいどりのししゅうぎれざんぺん 縦79.5横63 南倉
同書は、一枝の花枝をくわえた鳳凰を大きく刺繍で表した裂の残片である。
鳳凰の足元には唐花があり、その中央に見られる蓮台上で鳳凰は片足立ちする。大きく翻る鳳凰の尾羽は宝相華を思わせる華麗な形で、虚空に花と蝶が配されている。瓔珞を肩にかけた鳳凰の首には宝珠が付される。
刺繍は、撚りのない絹の平糸を用いて、刺し繡(さしぬい)の技法を中心に暈繝配色に表す。また、輪郭や嘴などには金・銀糸が用いられ、非常に華麗な色彩を見せるという。
褪色などがあるのか、極彩色にもかかわらず落ち着いた色合いとなっている。
蓮台の上で片足でバランスする鳳凰は、見た目には、茎をくわえた花が頭上で開いている様子が、豪華な尾と均衡している。
拡大すると朱の色が鮮やか。その外側の褪せてだんだらになっているのは何色だったのだろう。また、黄色の外側にある白色も変色している。
体部のV字形を並べたようなところの暈繝がみごと。
鳳凰の乗る蓮台にも緑系の暈繝があり、蓮華には紫系の暈繝がある。
その隣の蓮華の蕾には、丹系の暈繝の中に緑系の暈繝がある。
織物や刺繍布で暈繝のあるものはパルミラのものが漢よりも早かった。
それについてはこちら
しかし、染織品よりもモザイクの方が早かったのではないかと思うようになってきた。
それについてはいつの日にか

第65回正倉院展3 今年は花喰鳥や含綬鳥が多く華やか
                        → 第65回正倉院展5 六曲花形坏の角に天人 

関連項目
奈良時代の匠たち展1 繧繝彩色とその復元
日本でいう暈繝とは
暈繝はどっちが先?中国?パルミラ?
第58回正倉院展 暈繝と夾纈
第65回正倉院展7 花角の鹿
第65回正倉院展6 続疎らな魚々子
第65回正倉院展2 漆金薄絵盤(香印座)に迦陵頻伽
第65回正倉院展1 樹木の下に対獣文

※参考サイト
和色大辞典

※参考文献
「第65回正倉院展目録」 奈良国立博物館編 2013年 仏教美術協会