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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/05/26

竹中大工道具館4 大木を板にする


竹中大工道具館には大工道具がずらりと並んだ壁面があった。
二度目に行った時の解説員の説明では、明治時代だったかの一人の大工の持っていた道具なのだとか。

そし、下の階に行くと、伐木道具が壁に掛けられ、その下には丸太にそれらの道具を嵌め込んで、どのように使ったかが分かるように再現されていた。
それを『竹中大工道具館常設展示図録』でみていくと、

杣斧と鋸-木を伐る
同書は、森に立つ樹木を伐り倒すことから、材が生まれる。木を育て、日のあたり具合や地勢、風向きなどの立地を的確に見極め、木を伐り倒す職人を杣(そま)という。木を伐り倒し、枝を払い、荒加工まで使える汎用的な斧が、杣の重要な道具となるという。

切斧(ヨキ)
伐木の方法も歴史的に変化した。古くは切斧だけで木を伐り倒した。
切斧で根元を刻む

同書は、江戸以降になると、斧と鋸を両方使うようになる。斧で倒れる方向の根元へ受け口を刻み、その反対に鋸で追口を切って倒す技法が普及していったという。

各種の杣鋸(そまのこぎり)

切斧と杣鋸で伐り倒された切株

鉞(まさかり)と釿(ちょうな)-木をはつる


同書は、切り倒された原木に、一番初めに使う道具が鉞である。鉞で樹皮をそぎ落とし、製材する。鉞と釿はともに、職人自らの足元へと振り落とし、振り子のように道具の重みで力を引きだすという。

倒した木を鉞で削る


同書は、釿は八角にはつるなどの荒加工を行う。古い建物の目に触れない小屋組には仕上げが必要ないから、この釿のはつり痕を残した梁組みが見られる。釿の特徴ある加工痕に、台鉋とは別種の風合いを見出し、はつり痕をわざと意匠とした名栗仕上げも発達した。
釿は、江戸時代中期まで曲がった蛤刃が使用されていたが、今ではまっすぐな直刃が使われる。それぞれはつり痕が異なる。釿の柄は独特なカーブを描いて曲がっている。これを「釿振り」といい、強い曲線で山をつくり、手元に向かって逆に反ったゆるやかな曲線が安定して使い勝手が良いとされるという。

釿ではつる
同書は、槐(えんじゅ)の木などでつくられた釿の柄は、使い勝手を踏まえて職人自ら身の丈や腕の長さに合わせてつくるという。

木挽
同書は、荒加工された原木を挽き、角材や板などの材をつくりだす職人を木挽というという。


墨掛けは木挽の腕の見せどころ
同書は、その腕の見せどころは、木がもつ個性を把握し、効率良く見た目も美しい木目をつくりだすことという。
二人で巨木を挽く相挽
同書は、前挽大鋸と呼ばれる巨大な鋸は、木挽の代表的な道具である。この巨大な道具に、木を無駄なく効率的に製材する多様な知恵が詰まっているという。
両側から大鋸で挽いていって、微塵の差のない平らな板を切り出すというのはすごい技だ。
鎌倉時代でも打割製材で、割板を釿で削り落とすというかなりの無駄があったが、大鋸を使った木挽ではそれがない。
前挽大鋸
同書は、巨木な前挽大鋸に込められた工夫のひとつが、その大きな刃である。大きな刃全体が定規の役割を果たし、巨大な木でもまっすぐ平らに進む役割を果たす。
刃の先端が斜めにつくられている鋸がある。これは両側から二人で挽いたときにぶつからない工夫。「への字」に曲がった柄は、テコの原理で腕の力を効率良く刃へと伝える。いずれも長い年月の経験で積み重ねられた道具の改良が、力学的にもふさわしい機能をうみだしたものであるという。
チョンガケ
同書は、大きな歯をもつが、実際に木を削るのは歯先1㎜ほどの「チョンガケ」と呼ばれる先端でしかない。そのほかの歯は屑をはきだすための溝であるという。

ところで、竹中大工道具館のチケットは台鉋だった。リーフレットにも、台鉋だけでなく、鋸、墨壺、曲尺(さしがね)などの絵があって楽しい。
また、ミュージアムショップには、前挽大鋸、木槌、台鉋のキーホルダーやストラップなどがあった。使い勝手を考え後者の3点を買ったが、一回り大きなキーホルダーもほしくなってきた。
また訪れて、たくさんの大工道具とそれを使ってどのようなことが行われていたのかを見てみたい。

         竹中大工道具館3 大鋸(おが)の登場
                    →竹中大工道具館5 道具で知る建築史

関連項目
竹中大工道具館7 海外の建築と大工道具
竹中大工道具館6 土のしらべ展
竹中大工道具館2 大工道具の発達
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※参考文献
「竹中大工道具館 常設展示図録」 2014年 公益財団法人 竹中大工道具館