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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/06/05

連珠円文は7世紀に流行した


アフラシアブの丘で出土したソグドの宮殿の正壁には、サマルカンドにおいて行われた盛大な式典の様子が描かれている。場面の下方には特徴的な服装や冠を身につけた外国使節の姿が描かれている(『ソグドの美術と言語』より)。

西壁(正壁)にはソグド系の国々の使者たちの服装が比較的よく残っている。

『HALL OF AMBASSADORS』は、髭のある3人は剣をさげ、短剣を水平にして帯につけている。絹の丈長の衣装は、ササン朝で現れ、中国までもたらされた、円形文様の中に動物が表されたものだ。彼らは装身具と絹の反物を持っている。
白い顔と色黒の顔が交互に並ぶのは、ソグディアナには2つの人種がいたことを示すのと、画面構成にリズムをつけるためだ。中央の色黒の人物は、シャーシ(タシケントの古名)の大臣という。
連珠円文の中に動物が表された文様については、すでに以前にまとめた。
それについてはこちら
『古代イラン世界2』で横張和子氏(古代オリエント博物館)は、連珠円文意匠はサーサーン朝錦としては例外とさえ見えるのである。サーサーン朝の連珠文はしかるべき意味(フヴァルナー)をもつものであったが、しかし装飾の典型とはしなかったようである。それを典型的にしたのはむしろソグド錦であったのではないかと考えているということで、ソグド錦ということにして話を進める。

それぞれに文様の異なる服を着けているのは、その国に特徴的な文様を表しているのだろうか。
左から連珠円文、咋鳥文、シームルグ文となっている。
連珠円文はその中に横向きの猪頭が表されている。

このような猪頭のある連珠円文は、中国でも出土している。

連珠猪頭文錦 アスターナ325号墓出土 緯錦 顕慶6年(661年)以前 新疆ウイグル自治区博物館蔵

中央のシャーシ(現タシケント)の大臣が着ているのは、咋鳥文の文様。

右の大臣が着ているのはシームルグ文の服。
シームルグ文 イラン、ターケ・ボスターン大洞内奧浮彫 7世紀前半
『古代イラン世界2』は、今 日、イランの地でサーサーン朝ペルシア錦(324-641)とされるものの出土例は知られていない。それを具体的に知りうるのが有名なターケ・ボスターン の摩崖に掘鑿された大小二洞の大洞内壁に刻まれた浮彫(7世紀前半)の織物とみられるものの模様である。それは確実にサーサーン朝ペルシア後期の錦(サ ミット)の模様と言ってよい。東京大学イラン・イラク調査団はこの織物の模様に関して詳細な研究を行っている。それによれば織物の模様は50パターン以上 が識別され、その装飾の基本的なフォーマットは菱格子文形式、水平列の段文形式そして円文形式のおよそ3つのタイプに分けることができるという。
シームルグというササン朝独特の怪獣が草花のような円文に囲まれている。下中央には四弁花文から両側に上方向に花文が向かっている。道明三保子氏の復元図(同書)には上中央にも四弁花文がある。 


一方、モンゴル族とされる人々の服は、『HALL OF AMBASSADORS』は、その右の、もっと地味な服装の者たちはモンゴル族であろうという。
長衣の表地は無地だが、襟を開くと左の人物の方は大きな連珠文が現れる。右の衣裳はまた別の文様らしいが、よくはわからない。
西壁に描かれている人物で、襟を開いた者は他にも数名おり(上図緑色にした人物)、おそらく、当時のシルクロードの広い地域で最新流行だったのだろう、無地の表地でも、襟には極彩色の文様を大きく織り出した錦が使われていたと想像する。そして、同じ出身の者は、襟を開いていなくても、襟口の裏は同じような錦になっていたと思われる。

では、唐からやってきた使節団はどんな服装だったのだろう。しかし、
彼らは後ろ向きでワルフマーン王に献上品を渡す列を作っている。
絹の反物や生糸の束、繭の房などをそれぞれ持ってはいるが、着物の文様まではわからないし、当時の唐の服には襟を開くようにはなっていなかったらしい。

ソグディアナ出身の3名の上に描かれる西突厥人とされる者たちは王を護衛して近くに坐っている。
彼らは座布団のようなものに坐っており、その想像復元図には、部分的に連珠円文が見えている。それは彼らの身分の高さを示すものだろうか。

                           →連珠円文は7世紀に流行した2

関連項目
連珠円文の錦はソグドか
アスターナ出土の連珠動物文錦はソグド錦か中国製か
ササン朝ペルシアの連珠円文は鋲の誇張?
ササン朝の首のリボンはゾロアスター教
イッシュヒッド宮殿の壁画に羊文

※参考文献
「ソグド人の美術と言語」 曽布川寛・吉田豊編 臨川書店 2011年
「HALL OF AMBASSADORS」 サマルカンド歴史博物館発行
絵葉書 サマルカンド歴史博物館発行
「季刊文化遺産13 古代イラン世界2」 2002年 財団法人島根県並河萬里写真財団 
「文明の道3 海と陸のシルクロード」 2003年 日本放送協会
「世界美術大全集東洋編15 中央アジア」 2000年 小学館