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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/07/31

トマン・アガのモスクには組紐付幾何学文のモザイク・タイル


『砂漠にもえたつ色彩展図録』で深見奈緒子氏は、モザイク・タイルとは、一色の釉薬 をかけた板状のタイルを焼き、それを細かく刻んでモザイクのように組み合わせて文様を作る技法である。この技法はペルシア語でモアッラグと呼ばれ、下絵付 けタイルやハフト・ランギーとは異なり、タイルを切り刻んで修正するという工程が付け足される。言いかえれば、下絵付けやハフト・ランギーは陶器にも同じ 手法が見出されるが、モザイク・タイルは陶製品を用いた建築特有の手法といえるのであるという。

シャーヒ・ズィンダ廟シャーヒ・ズィンダ廟群では、モザイク・タイルの素晴らしい15:シリング・ベク・アガ廟(1385-86年)がある。『砂漠にもえたつ色彩展図録』は、シャーヒ・ズィンダーにイランで熟成した植物文のモザイクタイルが出現するのは1372年建立のシーリーン・ビカー・アガー廟が最初であるという。
同廟では、細い蔓で繋がった植物文をモザイク・タイルで表されている。
廟群では、27:トマン・アガのモスク(1405-06年)にもモザイク・タイル(モアッラグ)が見られるが、この2つの廟やモスクのモザイク・タイルは、20年の間に文様が変化している(廟群の説明板には前者の年代が記されているので、ここではそれに従う)。

モスク
イーワーン頂部から両側に続く壁面には、10点星、変形四角形や五角形、六角形が交差する組紐文が作り出し、それぞれの大きさにあった複雑なロゼット文が嵌め込まれている。花文どうしは繋がらない。
リュネット部では八角形と4点星の組み合わせ。

第3のチョルタックをくぐった左側に続くモスクの入口イーワーン。
内側の側壁には、第3のチョルタックの前にあったイーワーンの側壁と同じ文様。
リュネットには10点星を中央やや上におき、その輪郭をつくる10本の組紐によって、周囲に10個の変形四角形、その外側に8個の五角形、両横には五角形を2つ並べて変形6点星とする。
更にその外周に、菱形、二等辺三角形などを編みだし、やがては10点星へと繋がっていく。

このような組紐文がつくり出す複雑な幾何学文様は新来のものだったのだろうか。

また、(同時期)では、組紐文の区画はなく、蔓で繋がった植物文となっているが、シリング・ベク・アガ廟とは雰囲気が異なっている。

                              →幾何学的な組紐文

関連項目
アフラシアブ出土の陶器に組紐文
火焔山のトユクに組紐文のタイル
シャーヒ・ズィンダ廟群6 シリング・ベク・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群11 トマン・アガのモスク
シャーヒ・ズィンダ廟群15 トマン・アガ廟

※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン展図録」 2001年 岡山市立オリエント美術館