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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/08/25

イーワーンの上では2本の蔓が渦巻く


サマルカンドでは、モスクや墓廟の扉口上部やファサードの壁面に表されたアラビア文字の章句の地文に、一重に渦巻く蔓草文が表されていたが、イーワーンの上左右の三角の壁面には、2本の色違いの蔓草が渦巻いていた。

シャーヒ・ズィンダ廟群
1:表玄関 15世紀 モザイク・タイル

円花文から出たオレンジ色の蔓草の渦巻の間にトルコ・ブルーの蔓草が入り込んで等間隔で渦巻いている。

13:トグル・テキン廟 1376年 大判絵付けタイル
円花文から出た白色渦巻く蔓草の間にトルコ・ブルー蔓草が入り込んで、等間隔に渦巻いている。しかも、白色を使っているせいか、非常に躍動感がある。

15:シリング・ベク・アガ廟 1385-86年 モザイク・タイル
大花文を囲む蔓から、同じ色の蔓が左右に出る。左の小さいものも、右の大きいものも、途中からトルコ・ブルーの蔓草を出し、少し渦巻いている。

ビビ・ハニム・モスク、主門 1399-1404年 絵付けの補修タイル
絵付けタイルなので修復されたものと思われるが、建物が大きいだけに渦巻の数も多い。
白色の渦巻く蔓草の間に、トルコ・ブルーの蔓草が入り込み、等間隔で渦巻いている。 

グル・エミール廟 1404-05年

主門上部 絵付けの補修タイル
円花文から出た白色の蔓草は左右に渦巻きながら広がり、その間をトルコ・ブルーの蔓草が埋めるように渦巻いている。
開口部上 モザイク・タイル
円花文外側の緑の部分を突き抜けて、白色の蔓草とトルコ・ブルーの蔓草が等間隔で渦巻いている。

レギスタン広場

ウルグベク・メドレセ 1414-20年
イーワーン上 モザイク・タイル
突起のある大花文から、その輪郭と同じ色の蔓草が左右に渦巻きながら伸び、地文のトルコ・ブルーの蔓草も渦巻きをつくっているが、どたちらも互いの渦巻の中で、等間隔で渦巻くことはしない。
北イーワーン モザイク・タイル
10弁の大花文と同じ色の蔓が数本、渦巻くことなく左右に伸び、枝分かれしていく。その地文に、やはり渦巻くことのないトルコ・ブルーの蔓草が枝分かれしながら空間を埋め尽くす。

シルドル・メドレセ 1636年
イーワーン上
トルコ・ブルーの蔓草は白い花や蕾をつけながら枝分かれした地文と化し、右下から伸びたオレンジ色の蔓草は、ライオンの後肢を囲み、ライオンの鼻先で大きな渦を巻く。蜜に渦巻くことに執着していない。

ティリャカリ・メドレセ 1647年
イーワーン上
トルコ・ブルーの蔓草は渦巻ながら枝別れして次の渦巻をつくっていく。
一方、花文やそれに付属するアラビア文字のあるカルトゥーシュや小さな花文から出た白色の蔓は、大きくうねりながらトルコ・ブルーの蔓草の描く渦巻の中に入り込んだり、或いはその外側で弧を描いたりする。
その上、黄色の蔓草は大花文左斜め下の小円花文の先から左右対称に伸び、枝分かれしながらトルコ・ブルーの蔓草の渦巻の中に入り込んだりする。




どうやら、2色の蔓草が一つの渦の中で等間隔で渦巻くというのは、限られた時期のものらしいことが、このようにまとめていてわかってきた。
しかしながら、渦巻くことがなくなっても、複数の色の蔓草が伸び伸びと表されるこのようなタイル装飾は、ウズベキスタン独特のものではないだろうか。

関連項目
渦巻く蔓草文はキリスト教美術にもイスラーム美術にも