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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2016/08/30

中国の古鏡展5 秦時代の鏡の地文様は繊細


今回根津美術館で開催された「中国の古鏡展」では秦時代になると地文の繊細さが際立っていた。
同展図録は、非常に細い直線や渦巻線と小珠点とを組み合わせた地文をもち、そのうえに 様々な文様を載せる。戦国時代中頃から散見し、秦時代から前漢時代初頭にかけて地文のパターンが緻密でかつヴァリエーション豊かになる。地文の上に載る主文様も精緻でかつシャープな表現をとるものが多いという。
地文は驚くほど精密につくられているが、非常に浅浮彫のため、主文様を邪魔しない。

細文地四鳳鏡 秦時代(前221-206年) 径11.2㎝重104
極細線であらわされた鉤連雷文のなかを小珠点で埋め尽くし、その隙間に極細線の渦巻文を並べた地文をもつという。
浅い地文だが、鉤連雷文の線、その中に規則的に並ぶ小珠点と渦文。そして渦文と渦文の間には、Z字形のようなものが。これは渦雷文と呼ばれる円形渦の左右に三角渦を組み合わせた地文(同展図録より)という完成された文様になっていく、前段階のものかも。

細文地龍鳳文鏡 秦時代 径14.0㎝重200g
極細線で菱形に区画されたなかに渦巻や小珠点を充填した地文をもつという。

菱形の区画は割合に大きなもので、中央に大きな渦巻が4つあり、そこから小さな渦巻が2つ出ているもの、一つだけのものなど一定していない。大小の渦巻の隙間を小珠点が埋めている。
この区画は、ひょっとすると鉤連雷文を簡略化したもの?

細文地狩猟文鏡 秦時代 径22.1㎝重104g
細文地龍鳳文鏡と同じスタイルの地文をもつという。
龍鳳文鏡よりも大きいので、地文が小さく見えるのだろうか。

では、この鏡の制作時期はどうだろう。

渦雷文地四葉文鏡 戦国時代末-前漢時代初頭(前3世紀) 径11.8㎝重130g
同書は、円形渦の左右に三角渦を組み合わせた渦雷文をすき間なく並べた地文をもつ。 地文はブロック状の原型(スタンプ)を鋳型に押し当てる方法で施文されており、羽状獣文地や細文地と同じ技術系譜にある。戦国時代末から秦時代頃に出現し 前漢時代前期にかけて流行した。本鏡は大柄な円形鈕座の外周に四葉を配するだけの簡素なもので、地文の状況がよく確認できるという。
渦雷文が完成された文様となっている点、そして地文が大きくて秦時代の繊細さに欠ける点などから、秦時代よりも後、前漢時代に入ってからの作品のように思う。






※参考文献
「村上コレクション受贈記念 中国の古鏡展図録」 根津美術館学芸部編 2011 根津美術館