お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/02/24

クワの仏教美術 ウズベキスタン歴史博物館と国立美術館より


薄暗い歴史博物館でソグドやイスラームの作品を見て廻っているとき、奇妙な一群のケースがあった。かなり不気味なもので、撮るのをはばかられたものさえあった。
それはフェルガナ州のクワ(クヴァ、Kuva)という遺跡から出土したものであることを、その図録『STATE MUSEUM OF THE HISTORY OF UZBEKISTAN』(以下歴史博物館図録)で知った。
クワはタシケントやタジキスタンのホジャンドからはそう遠くない場所にある。
Google Earthより
おそらくクワ遺跡と思われるものはここ
Google Earthより
仏教寺院の発掘現場は北の端と思われる。
仏教寺院平面図 7-8世紀 ウズベキスタン歴史博物館にて

『偉大なるシルクロードの遺産展図録』は、南フェルガナとカシュガルを結ぶ交易ルート上にあったクワという。
歴史博物館図録は、5-8世紀の文書によると、フェルガナはボハン、パヒナあるいはフェイハンと呼ばれていた。その統治者はイフシドの称号だった。フェルガナは、馬、染料、薬、色ガラスなどの輸出で積極的に国際交易に関わった。この土地の都はある典拠によるとアフシケント、他の物によるとカサンであるという。
フェルガナは盆地で、現在の国境としては、キルギスに出っ張っているウズベキスタンの領土である。
Google Earthより

カメラに収めることの出来なかった仏像?は、シリという名の女性天部で、歴史博物館図録は、仏教の信仰を護る者だという。
顔が壊れているため、鼻・口・左目が失われていることに加えて、眉を吊り上げて睨み付けるような形相、そしてその上の3つの髑髏が、どうも仏教にそぐわない。
文殊菩薩像頭部 7-8世紀
やはり目を見開いて、口をあけている。

もちろん写したものもある。

マリ戦士像断片 7-8世紀
シリ女神と同じ丸顔で目が大きい。当時この地に住んでいた人々はこのような面貌だったのかも。
別の像の発掘状況。やはり何かを頭につけているらしい。

獅子面断片 7-8世紀
アレクサンドロス・コイン(ウズベキスタン出土)のように天部の頭部にあったもの?
すると、この肢はその天部の肩に回していたものでは。
菩薩の裙?

釈迦如来像頭部 7-8世紀
金箔が貼られているみたい。
正面から写したが、反対側のパネルがケースのガラスに映ってしまい、細部がわからない。

そして、国立美術館にも。

不空羂索観音像? 7世紀 塑造
目が3つ、口髭も。そしてペンダントや長い瓔珞をつけている。
ということは不空羂索観音の可能性もあるのでは。東大寺法華堂不空羂索観音立像(奈良時代、8世紀)のような。

魔王(魔羅)頭像 7世紀 塑造 高74㎝
『偉大なるシルクロードの遺産展図録』は、ここから出土した塑像はどれもインドの造形技法と現地の守護神の特徴が融合した、特異な形相をしている。この像は、仏教における悪の化身、魔羅像である。頭部には魔羅に属する鬼神の髑髏を冠しており、密教美術との影響が考えられるという。
2005年に日本でこの頭部を見ていたが、額に髑髏をつけた馬だと思ったものだが、顎鬚からすると長い顔の魔王だ。




ファヤズ・テパ講堂出土の仏三尊像 ウズベキスタン歴史博物館より
       →ワラフシャ宮殿の出土物 ウズベキスタン歴史博物館と国立美術館より


※参考サイト
創価大学の加藤九祚氏著クワ仏教寺院址研究ノート(1996年)

※参考文献
「STATE MUSEUM OF THE HISTORY OF UZBEKISTAN」(ウズベキスタン歴史博物館図録) 2013年 PREMIER PRINT
「偉大なるシルクロードの遺産展図録」2005年 株式会社キュレイターズ