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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/03/14

浮彫漆喰から施釉タイルへ ウズベキスタン歴史博物館より


イスラーム時代の建築装飾は、伝統的な浮彫漆喰から始まり、耐久性が高く大量生産が可能な素焼き焼成レンガへと移行し、やがて施釉タイルへと変わっていった。
その変遷をタシケントのウズベキスタン歴史博物館に展示されていたものから見ていくと、

1.浮彫漆喰の建築装飾

おそらくミフラーブの頂部などを飾ったもの 時代不明
赤く彩色されている。
四つ葉(四弁花文)に蔓草が入り込んでいる。控えめにはなっているが、ここにも丸い穴。
浮彫漆喰の場合は継ぎ目がないはず。しかし、欠けた箇所が白いので、焼成レンガではなく漆喰だろう。

2.焼成レンガ1
焼成された平レンガ組み合わせて文様を作っていく

館内にはブハラのサーマーン廟の模型が置かれているだけだった。
モノトーンの美しい装飾となる。

3.焼成レンガ2
外壁は耐久性のある焼成レンガで、しかも浮彫をほどこしたもので装飾されるようになる。レンガの場合は一定の形に作り浮彫して焼成し、それを組み合わせて壁面に貼り付ける。

建築装飾断片 10-12世紀 テルメズ
蔓草文だろうか。1枚の中に文様が完結しているが、4枚の合わせ目にも別の文様ができる。
建築装飾断片 11-12世紀 カシュカダリヤ
中央に四弁花文と八点星風の文様があるが、隣り合うタイルへと文様が続くように作られている。

4.施釉タイル
無釉タイルから施釉タイルへ、様々な色の施釉タイルを刻んで文様に組み合わせるモザイクタイルへ。そして文様をタイルに描き込むようになる。

浮彫タイル
全面にコバルト釉をかけて焼成しているが、ほぼ釉薬は剥落している。

モザイクタイル 16世紀 タシケント、クカルダシュ・メドレセのムカルナス
モザイクタイル
二重の蔓草文。細い曲線状の蔓や小さな花弁をみごとに刻んでいる。

六角形と6点星のタイル 15世紀 ハフト・ランギー(クエルダ・セカ) 
サマルカンドのシャーヒ・ズィンダ廟群のウスト・アリ・ネセフィ廟(1360-70年)について『砂漠にもえたつ色彩展図録』は、何といっても注目せねばならないのは、ハフト・ランギー技法の出現で、先のサファヴィー朝技法の先駆けとなった。その初例は管見の限りシャーヒ・ズィンダーに見受けられる。
となりあう色と色が交じり合わないように、まず境を溶剤で線描し、線に囲まれた面に色を発する釉薬を挿して焼き上げる方式であるという。
六角形の各角に円の一部がコバルトブルー(剥落している箇所もあるが)で色付けされている。タイルを並べていくとそこにも6点星と円の文様ができる。
6点星と幾何学文のタイル ハフト・ランギー 15世紀
六角形の各角に円の一部がコバルトブルー(剥落している箇所もあるが)で色付けされている。縦横にタイルを並べていくとそこに文様ができる。
しかし、このタイルを敷き詰めるとどんな文様になるのだろう。今までに見たことがない。
六角形と6点星のタイル 15世紀 クエンカ
『世界のタイル・日本のタイル』は、クエンカ技法は、型を使い、輪郭を残して文様部分を凹ませ、この凹部に色釉を詰めて焼成するもの。モザイクに近い効果が得られるという。
コバルトブルーの6点星の中には白い6点星、更に中にはトルコブルーの六角形がある。これを敷き詰めると、コバルトブルーの6点星は、中心に白い円のある6つの六角形で囲まれることになる。

多色絵付けタイル
一見、色タイルを形に刻んで文様に組み合わせるモザイクタイルを簡略にした彩釉タイルに見える。
ところが写真を拡大して見ていると、赤で縁取られた黄色っぽい茎には金箔が貼られていた。これはラージュヴァルディーナと呼んでいいものかどうか。
他にも金箔を貼ったものではないかと思われる作品があった。

絵付け浮彫タイル 時代不明 アラビア文字の銘文
白い文字は上の蔓草と同じように赤で縁取られ、ほとんどが白いが、黄色っぽいところも残っている。
絵付けタイル 時代不明 
六角形だが曲面になっている。付け柱に貼り付けられていたものだろう。貴重なもののようで、木の枠に収められている。
緑の花を縁取る組紐にはやり金箔が貼られている。

絵付けタイル 16-17世紀 染付と呼んで良いのか青花なのか迷う。
ヒヴァの宮殿や墓廟などを飾っていたタイルほど凝った文様ではないが、ペンジケントのルダーキー博物館にあったタイルからヒヴァのタイルへと発展していく過程とも思える。大きな壁面一面に貼付られたのだろう。
下絵を描いて焼成後に同じ位置に組み合わせられるように数字が書き込まれている。

このように、壁面装飾の変遷をウズベキスタン歴史博物館で辿ることができるのだが、問題はこのような順番で展示されていないこと。帰宅後写真を整理していて理解できたのだった。







※参考文献
「STATE MUSEUM OF THE HISTORY OF UZBEKISTAN」(ウズベキスタン歴史博物館図録) 2013年 PREMIER PRINT
「世界のタイル・日本のタイル」 世界のタイル博物館編 2000年 INAX出版