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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/05/26

木X仏像展 法隆寺四天王像に似た小像


展示室に入って最初に出会ったのが小さな天王立像で、それは法隆寺四天王像によく似ていた。日本にも同じような天王像があったのだ。

天王立像 飛鳥時代(7世紀) 木造 高51.7㎝ 東京藝術大学大学美術館蔵
同展図録は、首をガードするような高さのある大きな襟が特徴的な上衣を着け、縄状の帯を締めている。静かにうずくまる邪鬼を含め、最古の天王像として知られる奈良・法隆寺金堂の国宝・木造四天王立像と共通点が多く、現存稀な飛鳥時代の天王像のひとつとして重要な作例である。構造は頭部から邪鬼までをクスノキの一材から彫出したもので内刳は施していない。上衣の襟には大きくカラフルな縦縞の彩色が残り、衣裾のドレープが丁寧に表現されるなど、小像ながらも完成度の高い造像である。また、高い髷をつくる、天衣を胸前で結ばないなどといった点で、先の法隆寺金堂木造四天王立像と異なる特徴を併せ持つことは興味深いという。
東京藝術大学大学美術館天王像(東藝大本とする)の胸前の甲冑は、文様というよりも、年輪の層が浮き出ている。
まず、法隆寺の四天王像と大きく違っていたのは、その表情だった。
同展図録は、口を開き険しい表情でまっすぐ前方を見据えるという。
額上の3つの穴には、法隆寺本と同様に、金銅製の透彫冠が付いていたことを示している。
法隆寺四天王像うち多聞天立像 飛鳥時代(7世紀)
眉は吊り上がっているが怒りの形相ではない。目は杏仁形がやや崩れたような形で、瞳は表されていない。

同書は、総じて飛鳥時代の天王像は、絵画作品も含め当時の中国すなわち隋・唐時代に流行した像容とはやや異なり、四川省成都市・万仏寺址から出土した南北朝時代・梁(502-57)の石造天王立像をはじめとする、一世代前の造像に通じるすがたである。このような天王像の像容におけるタイムラグは、飛鳥時代の仏像美術を研究する上で重要なテーマのひとつであるがいまだ不明な点が多いという。
中国からの仏教文化は、飛鳥・白鳳時代は韓半島を経由して入ってきたので、古い時代の様式、天平時代になると、直接当時の最新様式のものが請来されるようになったという風に言われて来た。

天王立像 四川省成都市万仏寺址出土 南朝時代(6世紀) 砂岩 中国国家博物館蔵 
『中国国宝展図録』は、襟の立った長袖コート状の鎧を身につけ、腰にベルトを締める。裾に規則的に刻まれた下衣の襞がのぞいている。大きな肩布をはおり、その下に胸甲らしいものの輪郭線が表される。
法隆寺金堂四天王像(飛鳥時代)は、上に述べたような形式を備えており、その関連が注目される
という。

確かに法隆寺四天王像(法隆寺本とする)と似ているが、法隆寺本は立て襟が筒状で、どんな風に着るのかわからない。その点、東藝大本は、左右に開いた襟になっている。
口が開いてるのは東藝大本と共通する。
そして本像が、飛鳥時代に制作された法隆寺本とも、東藝大本とも異なるのは、革製のベルトを締めていることだ。飛鳥時代のものは、どちらも縄状に撚りをかけた布状のものである。

康勝釈迦諸尊像 四川省成都市出土 梁、普通4年(523) 石造  成都市四川省博物館蔵
『世界美術大全集東洋編3三国・南北朝』(以下『南北朝』)が、左前方には大袖の衣に鎧をつけ長靴を履いた神将像という。

襟は後頭部を隠すほどに大きく、胸元で外反している。天王像は蓮台に乗るが、その下には邪鬼が身を丸めている。
東藝大本がその上に立つ邪鬼は、両手で天王像の垂らす天衣の端を支えている。天王像に踏みつけられて懲らしめられているというよりは、天王像と共に外敵から護るために、目を見開いて構えているようだ。
では法隆寺本が踏みつけている邪鬼はどうだろう。
法隆寺本の邪鬼は、その下の岩とともに、非常に特異な造形である。
ただ、奈良時代以降の邪鬼のように、踏みつけられているのではなく、それぞれの天王像の使いとして、棒状のものをそれぞれの手で支えているように見える。
どうやら、飛鳥時代の四天王像は、侍者として邪鬼を足の下に侍らせているらしい。

法隆寺で仏像が造られた頃、寺院を建立するほどの力はなくても、屋敷の中で仏像を安置し、その像を護るために四天王像も欲しいと思って、法隆寺本に真似て造らせた人もいたのかも。

               →木X仏像展 東博蔵木造菩薩立像

関連項目
木X仏像展 10世紀の地蔵菩薩立像
木X仏像展 四天王寺の仏像
国宝法隆寺金堂展には四天王像を見に行った
法隆寺金堂四天王像の先祖は

※参考文献
「木X仏像展図録」 編集大阪市立美術館 2017年 大阪市立美術館・産経新聞社
「国宝法隆寺金堂展図録」 2008年 朝日新聞社
「中国国宝展図録」 2004年 朝日新聞社
「世界美術大全集東洋編3三国・南北朝」 2000年 小学館