お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/07/11

ペルセポリス アパダーナ東階段の各国使節団


アパダーナの東階段は比較的保存状態が良いので、屋根を架けて直射日光に当たらないよう保護されている。従って暗い所での撮影となり、思うような写真とはならなかった。
『THE AUTHORITATIVE GUIDE TO Persepolis』(以下『GUIDE』)には屋根が架かる前の写真があった。こういう状態で、午前中に見学していたら、もっと良い写真が撮れただろうなあ。

それでも、各国の使節団がそれぞれの服装で、献上品を掲げ、或いは動物を牽いて階段上の広間へと向かって行く浮彫を間近に見ることは出来た。
また、使節団の区切りに樹木(糸杉とされる)が置かれ、糸杉の次に杖を突いたペルシア人の先導者がいて、使節団の先頭の人の手を引いている。腹部で紐を結んだような長衣の裾は規則的に襞が表され、イオニア人によって浮彫されたか、その影響が残っていることを示している。紐の上に出ているのは、短剣?
先導者の服装が異なる場面もある。帽子も丸く、膝までの長衣に、腰紐からアキナケス剣を提げている。
このアキナケス剣について『世界美術大全集東洋編15中央アジア』は、鉄剣は柄と刃が一体になっており、鐔は蝶あるいは逆ハート形に近い形をしている。このような鐔をもつ剣をギリシアではアキナケスと呼ぶ。アキナケス剣は、いわゆるスキタイの三要素(動物文様、馬具、武器)の一つである武器のなかで、三翼鏃とともに本来スキタイ固有の要素と考えられ、スキタイ時代にはユーラシア草原地帯とその周辺の中国やイラン、ギリシアにも広まったという。
すでにペルシアでもアキナケス剣は普通に使われていた時代だが、3つのスキタイの国から使節団は派遣されている。
この先導者が手を引いているのは、バビロニアからの使節団長。

糸杉と先導者は省略して、使節団だけを紹介する、ただし、『GUIDE』にはそれぞれの国の使節団を番号を振って解説されているが、それは階段上部から、つまりは、ペルシアにとって重要な国から並んでいる。南端の階段下部から見ていったので、逆順になる。
また、同書の説明は北階段のものなので、使節団の人数が東階段とは異なっているものもある。

㉓から⑲までは斜めになった階段壁面の上端

㉓ エチオピア人 3名
一際大きなペルシア人に案内される。二人目は器またはその中に特産品を入れている。ダナキル砂漠で採れる塩とか。3人目は象牙を担ぎ、後方に顔の短い動物を牽いている。
『Persepolis Recreated』はオカピとしている。
帽子は被らず長衣を着る。

㉒ リビア人 3名
二人目はガゼルのような動物を連れ、三人目は二頭立ての戦車の馬の横を歩いている。
縁飾りまたは房飾りのある長衣を着る。帽子は被らないが、ウエーブのある髪の端だけがアッシリア人のようにパーマをかけているる

㉑ ザランジュ人 4名
『地球の歩き方』は現在のアフガニスタン南西部にいたとされるという。
二人目は槍と丸い楯を持つ。三人目は牛の引き綱の端を左手で握り、右手で綱を支えている。四人目は棒を持つ右手で牡牛を抱えるように行進する。
膝下までの服は胸前でかなりの襞がある。
髪は筋状で鉢巻きを締め、髪の端と髭にパーマをかけている。

⑳ ヨルダンとパレスチナのアラブ人 3名(同書では4名)
長い衣類を持った人と、左手で手綱の端を握り、右手で綱を牽いて背後のヒトコブラクダを連れた人。
半袖のようで、⑳よりも襞は少ない膝下までの服を着る。
直毛で、端だけ外にカーブしている。

⑲ ヨーロッパのスキタイ人 4名
登場しているのは「尖り帽子のサカ(サカ・ティグラハウダー)」。wikipediaによると中央アジアの西側に住んでいたという。
二人目と三人目は先になるほど太い槍と密に縦線が入った楯を持ち、三人目は良い種馬の左側で手綱を牽く。
尖り帽子は耳も覆っているが、後頭部の髷?は出ている。
襞のないゆったりとした服装で、袖口は広い。

⑱から④までは3段構成で5列

⑱ 北西部のインド人 6名
天秤棒で何を運んでいるのだろう。同書は香辛料か砂金としている。続いてラバの左側に棒を持って連れる人。最後は戦斧を持つ人。
短い直毛で、鉢巻きを締める。
膝上の服を上半身脱いで、腰のところで丸めているのかな。

⑰ サカ・ハウマヴァルガー(西部スキタイ人) 5名(同書は6名)
wikipediaによると、ハウマを飲むあるいは造るサカで、中央アジアの東側に住んでいたという。
アキナケス剣を両手で縦に持つ人。腕輪を持つ人。戦斧を持つ人。良い種馬を牽く人。
耳まで覆う帽子は尖っていない。
足首で絞ったズボンに膝丈の上着を着てベルトを締めている。その裾からアキナケス剣の下端が見えている。

⑯ サガルティア人 5名
『地球の歩き方』は、現在のヤズド周辺にいた部族だと言われているという。
メディア風衣装(『GUIDE』によると)を運ぶ3人の後ろには馬を運ぶ人。
尖頭の者は丸い帽子を被り、パーマをかけた髪の端が出ている。後ろの者は頬も隠れる頭巾を被っている。
あまり特徴のない膝丈の服装で、ベルトはしていない。

⑮ パルティア人 4名
縦長の器を2つ運ぶ人。鉢を2つ運ぶ人。フタコブラクダを牽く人。
中央アジアより西に生息するのはヒトコブラクダではなかったかな。
拡大ウェーブのかかった髪に鉢巻き、前髪だけ短くしている。耳飾りも付けておしゃれ。顎髭にピンと伸ばした口ひげも。
長袖の膝丈の衣服をベルトで締め、たるませたズボンの裾を先の尖ったブーツに入れているみたい。

⑭ カブール地方のガンダーラ人 6名
コブウシは二人がかりで連れている。丸い楯と槍を持つ人。後ろの2名は2本の槍を運ぶ人。
鉢巻きの下はパーマをかけた髪と顎髭。
五分袖膝丈の服に太いベルトを巻き、裾の長い上着を羽織る。

⑬ バクトリア人 4名
小さな器を2つ持つ人。その後ろには別の形の器を2つ運ぶ人。フタコブラクダを牽く人。
丸く小さな帽子から髷を結った髪が出ている。少なくとも後ろの者は耳飾りを着ける。
チュニック丈の上着にベルトを巻く。足首で締まったズボンをはいている。

⑫ イオニア人 8名
3種類の器を3名で一対ずつ運ぶ。布を運ぶ2人と羊毛玉を2つずつ運ぶ2人。
㉒リビア人の髪型に似るが、丸まった端は4列と多い。
五分袖の内着にはウェーブした横縞があり、その裾は縦縞となる。その上に襞をつけて大きな布を巻く。

⑪ 尖り帽子のサカ(スキタイ人) 6名
戦闘の人は箙を肩から提げている。良い種馬を連れた人、一対の腕輪を持つ人、衣服を持つ人3名。全員右腰にアキナケス剣を提げている。
⑲のヨーロッパのスキタイ人の帽子よりも先が長く尖った帽子を被る。
膝丈の服にベルトを巻き、別のベルトにアキナケス剣を提げる。裾のすぼまったズボンを履く。

⑩ エジプト人 6名
足元だけが残る。
『GUIDE』は、衣装と牡牛を運ぶという。
足首まである長い服を着ていることくらいしか分からない。

⑨ カッパドキア人 5名
馬を運ぶ人、メディア風衣装(『GUIDE』による)を運ぶ3名。
複雑な形の帽子あるいは頭巾を被り、パーマをかけた髪と顎髭に覆われている。
膝丈の服にベルトを締め、マントのような上着を羽織る。
後方の者が運んでいるのは、足先まで続いたズボンのよう。

⑧ メソポタミアのアッシリア人 7名
大きさの異なる器を一対ずつ運ぶ2人。水を容れる革袋を左手に、カップを右手に持つ人。衣装ほを持つ人。2頭の牡羊を二人で連れている。
4段の鉢巻きをしてパーマをかけた髪をおさえている。
五分袖で膝下丈の服に4段のベルトを締め、足首までの靴を履く。

⑦ アラコシア人 5名
Wikipediaでは、アフガニスタンのカンダハール州とする。
両手に一つずつ鉢を持つ人、その後にフタコブラクダを連れる人。『GUIDE』は、野生ネコの皮を持つ人もあるようだ。
段々になった帽子のような頭巾のようなものを被る。
膝上丈の服にベルトをして、長いブーツにたるみのあるズボンを入れている。

⑥ リュディア人 6名
壺・碗・腕輪をそれぞれ一対ずつ持った3名と二頭立ての戦車の馬を連れた人、その背後に1名。 
5段の帯状の円錐形の帽子を被る。
近隣のせいか、⑫イオニア人の服装に似ている。

⑤ バビロニア人 6名
似たような鉢を2つずつ持った2人、刺繍したような布を持つ人。水牛の綱を牽く人と背後に水牛を抱いて進む人。
尻尾のような先を垂らした帽子を被る。
五分袖で足首まである長衣に、襞が多く端に小さな重りを着けたようなストールを肩に回し掛けている。

④ ヘラートのアーリア人 5名
開いた鉢を2つ持つ人。フタコブラクダの綱を牽く人と背後に2名いるが、持ち物は不明。『GUIDE』は衣装を持つ人とヒョウの毛皮を持つ人だという。
髭も隠れる頭巾を被る。
前の者は膝下丈の長衣、後ろの者は膝上丈の服にベルトを締める。

階段が始まるので③と②は2段に

③アルメニア人 3名(『GUIDE』は5名)
馬を連れた人と壺を運ぶ人。
⑨カッパドキア人と同じような帽子あるいは頭巾を被る。口ひげは先をカールさせ、顎髭にはパーマをかけていない。
長袖で膝丈の服にベルトを締め、前に飾りを垂らす。

② エラム人 6名
『GUIDE』は前の二人を、弓を持つ人と双刃の短剣を持つ人とする。続いて牝ライオンを綱で制御する人と、子ライオンを抱く2人。
鉢巻きで留めた髪は端が6段にパーマがかかる。
着物のように広くなった袖口の長衣は前に規則的な襞がある。

そして一番上には①

① メディア人 9名
壺を持つ人。一対の器を持つ人。アキナケス剣を持つ人。一対の腕輪を持つ2人、衣装を持つ3人。
人数も多いし、ペルシアの最重要国なのだろう。
先頭の者は丸い帽子、後ろの者は頭巾を被る。
長袖に膝丈の服にベルトを締め、先頭の者は、もう1本のベルトにアキナケス剣を提げる。
このメディア人の服装を多くの国のものが献上しているのは何故?

         柱頭彫刻←       使節団の献上品

関連項目
アパダーナの階段中央パネル
百柱の間扉口側壁浮彫
ペルセポリス4 アパダーナ東階段から百柱の間
ペルシア風ラマッス

参考文献
「THE AUTHORITATIVE GUIDE TO Persepolis」 ALIREZA SHAPUR SHAHBAZI 2004年 SAFIRAN-MIRDASHTI PUBLICATION
「地球の歩き方E06 イラン ペルシアの旅」 2012-13年版 ダイヤモンド社
「世界美術大全集東洋編15 中央アジア」 1999年 小学館