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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/07/21

ペルセポリス 百柱の間扉口側壁浮彫


百柱の間はアルタクセルクセス1世が建てた大きな建物で、現在は円柱はほとんどなく、四方の扉口や窓などの枠が残っていて、扉口の左右側壁には浮彫が施されている。左右同じモティーフが表されているが、胸像のように、向きが同じになっている。

北柱廊玄関の西扉口
西側壁
頂部に玉座に座るアルタクセルクセス1世の謁見の場面。その下には5段に渡って10名ずつの近衛兵が左右から行進して中央で向かい合う図が表され、東西側壁合わせて100名、100本の円柱で支える広間への入口の一つに表されていることになる。
『THE AUTHORITATIVE GUIDE TO Persepolis』(以下『GUIDE』)は、謁見の場面は、宝物庫で発見されたものの基本的な特徴を繰り返している、玉座の王、2本の香炉、報告する「メディア風」千人隊長、タオル持ち、そして2人の「ペルシア人」近衛兵が場面の両端に表されている。「宝物庫の浮彫」と違って、玉座の背後に皇太子が登場するという。
アルタクセルクセス1世の皇太子といえばクセルクセス2世。彼が自ら父王の頭上にハエ払いを掲げている。

南壁西扉口は、両側壁に「玉座担ぎの図」が、共に百柱の間へ入る様子が浮彫されている。
『古代イラン世界2』は、帝王が座す玉座の脚の側面に数段に分かれて属州の民が配されているが、両手を上げて玉座を担いでいる。あるいは、帝王の玉座のあるプラットフォームを彼らが担いでいる。この図はまさに、「世界の王」の観念を明確に示している。
アッシリア帝国後期の帝王の脚の装飾に既に見られるという。
『GUIDE』は、両側の側壁はひと続きの場面となっていて、28名の玉座担ぎは、その位置と着衣によって識別できるという。
28という数は、アパダーナ北階段の使節団の数である(東階段では23)。
西側壁
『古代イラン世界2』は、帝王の頭上には有翼のアフラ・マズダ神像が配されているが、その左手には王権の象徴の環(クワルナフ)を持ち、右手を挙げて祝福しているので、これは王権神授を表しているという。
その下に有翼円盤だけが2段あり、その両側にはライオンの行進が表される。それぞれはロゼット文の文様帯で仕切られ、最下部は斜格子の文様帯となる。気付いていないだけかもわからないが、これはペルセポリスで初めて見た文様帯ではないかな。
一人の召使いが左手でタオルを半折りにして握り、右手でハエ払いを王の頭上に掲げている。双方とも顔面や手先などが壊れていて残念。
アルタクセルクセス1世と召使いの着衣の袖と、長い裾、そしてタオルまでが整然とした衣文を丁寧に表している。
玉座は下から見てもよくわからないが、獣足になっている。獣足についてはこちら
アルタクセルクセス1世の玉座を載せた大きな台の下には、3段にわたって玉座を担ぐ人物がいる。
上段右から(番号は、アパダーナ北階段浮彫の使節団に呼応する。『GUIDE』による)
メディア人 ④アーリア人 ⑤バビロニア人 ⑦アラコシア人
東側壁上段左より
エラム人 ③アルメニア人 ⑥リュディア人 ⑧アッシリア人
西側壁中段右より
カッパドキア人 ⑪尖り帽子のサカ(スキタイ人) ⑬バクトリア人 ⑮パルティア人 ⑰ソグド人
東側壁中段左より
エジプト人 ⑫イオニア人 ⑭ガンダーラ人 ⑯サガルティア人 ⑱ホレズム人
西側壁下段右より
インド人 ㉑サッタギディア人(パンジャブ) ㉓ダアイ人?(カスピ海東岸のスキタイ系遊牧民) ㉕東イラン人 ㉗エチオピア人
東側壁下段左より(ただし写していなかったので、『古代イラン世界』の東扉口の図版より)
⑳スクルディア人 ㉒サカ・ハウマヴァルガー(西部スキタイ人) ㉔アラブ人 ㉖リビア人 ㉘スキタイ人

『古代イラン世界4』は、アケメネス朝の美術は、古代西アジア美術を集大成したもので、これ以上発展する余地がないとまでいわれている。
たとえば、朝貢図はアッシリア帝国の美術にならったものである。玉座担ぎの図もアッシリア後期の帝王の玉座の脚の装飾に既に見られる。有翼円盤のアフラ・マズダ神の図像および、その左手に持つ環(正当な王位の象徴、クワルナフ)もアッシリアのアッシュール神像(淵源はエジプト)に由来するという。
アケメネス朝は広大な領土となった各地の先進美術や技術から新たなペルシア風を創っていったのだ。

 アパダーナの階段中央パネル←  →アケメネス朝の美術は古代西アジア美術の集大成 

関連項目
ペルセポリス4 アパダーナ東階段から百柱の間
獣足を遡るとエジプトとメソポタミアだった

※参考文献
「Persepolis Recreated」 Farzin Rezaeian 2004年 Sunrise Visual Innovations
SD選書169「ペルシア建築」 A.U.ポープ 石井昭訳 1981年 鹿島出版会
「THE AUTHORITATIVE GUIDE TO Persepolis」 ALIREZA SHAPUR SHAHBAZI 2004年 SAFIRAN-MIRDASHTI PUBLICATION
「季刊文化遺産8 古代イラン世界」 1999年 財団法人島根県並河萬里写真財団