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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/09/05

チョガ・ザンビールの出土品


チョガ・ザンビールの遺跡は現在、三重の城壁も小神殿もジッグラトも、焼成レンガか日干しレンガという、土色一色と言っても過言ではないほどである。
しかし、ジッグラトの壁では、コバルトブルーがわずかに残る彩釉レンガをたまに目にすることがある。
『図説ペルシア』には、コバルトブルーの釉薬がよく残ったレンガの図版が載っている。ジッグラトは、建立当初は色彩ゆたかな建物だったのかも知れない。

ずっと以前、岡山市オリエント美術館で、チョガ・ザンビールの出土品を見たことがある。


釘頭状建築装飾 ウンタシュ・ナピリシャ王銘入り 前1275-40年頃 高35.5径30.4㎝ 岡山市立オリエント美術館蔵
『砂漠にもえたつ色彩展図録』は、釉のかかっていない軸部を壁体に挿し込み、丸い面をこちらへ向けたという。
わかりにくいが、円盤状のものには施釉されていた。青みがかった釉薬がわずかに残っている。
ハフト・テペ遺跡に併設された博物館でも1点展示されていた。

Grazed Wall Knob 前13-12世紀
こちらは白に近い釉薬がかかっていた。
円盤状の頂部と軸部に穴があいている。長い釘でも使って、壁に固定していたのだろうか。

釘頭状装飾付方形タイル 前1275-40年頃
左:37.4X37.4高27㎝ シルクロード研究所蔵 
右:37.4X37.6高約19㎝ 岡山市立オリエント美術館蔵
同展図録は、ともに方形パネルに釘頭状部分がついたもので、中にホゾを入れて壁面に深く挿し込む。類例がアッシリアにあり、ジガティと呼ばれているという。
トルコブルーの釉薬が残っている。
連珠文というには大きすぎるが、8つの凸状円が中央の釘頭状突起を囲み、タイルの四隅には3枚の花弁のようなものが配される。よく見ると釘頭状突起には中央に大1個、周囲に小6個の七曜円文が、おそらく凸状に付けられている。
メソポタミア文明展でも展示されていた。

ウンタシュ・ナピリシャの銘の入ったタイル 前14世紀後半 彩釉煉瓦 高22.5長37㎝ ルーヴル美術館蔵
『メソポタミア文明展図録』は、最も荘厳な場所である「王の門」とジッグラト頂上の神殿は、煌めく装飾で表面を覆われていた。装飾は煉瓦のほか、中央に突起があり隅に花弁のモチーフのある釉薬のかかったタイルが使われた。このシリカ質の彩釉煉瓦の輝きは、表面を覆った青緑色釉薬の効果だった。タイルと一体となった中央の突起は、穴の空いた板を壁に固定する釘の形を模倣している。そこには、建設した王の名がエラム語で刻まれるか、水玉模様が描かれた。この釉薬を用いた建築装飾はエラム人による技術革新であり、偉大な後世に、とりわけ前6世紀ネブカドネザルⅡ世治下の都市バビロンで再現されたという。

こちらもハフト・テペ考古博物館で展示されていた。
釘頭状突起には中央に大きな円、その周囲に6つの小さな円が凹状に付いている。矩形の平面には8つの大きな凹状の文様、そして四隅には3枚の花弁が凸状に表されている。
もう一つは、おそらくウンタシュ・ナピリシャの名が刻まれた平頭の釘頭状突起と、四隅に3枚の花弁が付けられている。
釘頭状壁面装飾はスーサ遺跡の博物館にも。
また、スーサの博物館では、スーサ出土の釘頭状突起装飾もあり、前5千年紀のものさえあった。それについては後日
そしてテヘランの国立考古博物館にもあった。
このような巨大な装飾品を取り付けた壁面の想像図をどこかで見たような記憶はあるのだが、例によって見つからない。あるいは、「砂漠にもえたつ色彩展」でそのような図が参考展示されていたのかも知れない。

捻り文円筒ガラス棒 前1275-40年頃
上:長17.4径41.5㎝ 岡山市立オリエント美術館蔵
下:長25.5径1.4㎝ シルクロード研究所
同展図録は、戸口付近で白と黒の捻り文のガラス棒がまとまって出土している。木製の扉に貼った装飾と考えられているという。

テヘランの国立考古博物館には、その木製扉が展示されていた。

木枠はもちろん現代のものだが、少なくとも似た形で出土したからこそ、このように復元できたのだろう。
それにしても、白と黒の捻り文のガラス棒を斜めにして並べるとは。
ジッグラトの階段通路前の門にあったにしては小さい。宮殿などを飾っていたものかも。

ハフト・テペ考古博物館では、ジッグラトの4面各中央に設けられた階段の前の壇には、テラコッタ製の牡牛像と獅子鷲(鳥グリフィン)の像が置かれていた。その獅子鷲が1体展示されていた。頭部は大きめだが、翼は小さく、体部は細身になっている。
鷲翼は背中の上で蝶の羽根のように閉じている。
想像復元図では、階段への入口の前には、どちらも獅子鷲が置かれている。レザーさんの説明やパネルでも、片方が牡牛、もう一方が獅子鷲という風に理解していた。

テヘランの国立考古博物館では、ジッグラト北東面の階段入口の前から出土した牡牛像があった。瘤牛だ。
説明板には牡牛の出土場所、出土状況の写真と共に、牡牛に刻まれた銘文が記されていた。我はフンバン・ヌメラの息子、アンシャンとスーサの王ウンタシュ・ガル、施釉のテラコッタ製のこの牡牛は、昔の王たちが創り得なかったもので、この聖なる地を尊厳を持って祝福したインシュシナク神のために、我が造り守護獣としてこの聖域に安置した。我は長寿と建康を願って捧げた・・・我の子孫たちに伝える・・・。
別の博物館に展示されていたので、両方の大きさを比べることはできなかったが、周囲の人や展示ケースから見て、ほぼ同じ大きさだったらしい。




関連項目
チョガ・ザンビール2 ジッグラト南東から北東面
彩釉レンガは前13世紀のチョガ・ザンビールにも

※参考文献
「四大文明 メソポタミア文明展図録」 2000年 NHK  
「砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン展図録」 2001年 岡山市立オリエント美術館 
「図説ペルシア」 山崎秀司 1998年 河出書房新社