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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2014/09/16

蓮華座9 クシャーン朝



五胡十六国、すでに蓮華座が見られた。クシャーン朝期の蓮華座はどんなものだったのだろう。

ガンダーラ

三尊像 3-4世紀 灰色片岩 高さ59㎝幅43㎝ ガンダーラ出土
『ガンダーラとシルクロードの美術展図録』は、右肩を脱ぐ着衣法(偏袒右肩)、説法を表す手勢(転宝輪印)、蓮華座はインドに由来する。二菩薩を両側に配した三尊形式はガンダーラに始まり、東方へ伝播したという。
主尊は大きな蓮台に結跏扶坐し、蓮肉からやや下に素弁の受花と反花がある。受花は小さく反花が大きい。
そして脇侍菩薩の台座には受花はなく、右脇侍の立つ蓮台の反花は上段が小さく、下段が大きな素弁、左脇侍の方は、大きな素弁の反花の蓮華座に立っている。
その下の段でも、四角い区画の中の文様は同じでも、左右でその大きさが異なっている。シンメトリーを避けることが好まれたのだろうか。
そう言えば、中国の三尊像でも、脇侍菩薩の様式が左右で異なるというのはよく見られた。仏教美術の最初期にすでに、そのような約束事があったのかも。

仏説法図 3-4世紀 モハメッド・ナリ出土 片岩 高さ120㎝ ラホール博物館蔵
『パキスタン・ガンダーラ彫刻展図録』は、大きな方形パネルの中央に、如来が転宝輪印を結んで蓮華座の上に坐す。周囲には、さまざまな姿勢の仏、菩薩、天部などをすき間なく配する。下部は蓮池で、蓮茎の脇でナーガが半身を出しているという。
ナーガがどれかわからないが、釈迦の坐す素弁3段の受花と素弁1段の反花は、太い蓮茎から咲いたもの。その蓮茎は下段の蓮池から伸びていて、蓮池からはたくさんの蓮華が出て、ナーガなどの太い蓮茎両側の2人ずつ、その外側の信者夫妻?を支えている。画像からはもれたが、夫妻の両外側には菩薩が蓮台の上で腰を掛け、釈迦を見上げている。
蓮池には魚が泳ぐる。太い蓮茎の下には何かが2つ登場するが、水鳥だろうか。蓮池にしては水の流れが勢いよく表現されている。

仏陀立像 2-3世紀 灰色片岩 高さ109㎝ ガンダーラ出土
『ガンダーラとシルクロードの美術展図録』は、典型的なガンダーラ仏立像。施無畏印という右掌を正面に向けて挙げるポーズは西アジアの神像・王像に、左手で衣の一端をとるのはローマの皇帝像に由来するという。
時たま図録を開くと、以前には気づかなかった特徴や、その由来を再認識することができる。
釈迦は円筒形に2段に下がる反花のある蓮華座に立つ。蓮弁の龍華は二重になっているが、これが子葉のある単弁の始まりなのだろうか。

仏陀説法図 2-4世紀 高さ64.5㎝ パキスタン出土 オリエントコーポレーション蔵
『シルクロード華麗なる植物文様の世界』(以下『シルクロード』)は、蓮華座に座した仏陀は周囲の菩薩たちに説法している。周囲には多数の蓮の花があらわされ、当時の人々の浄土観が反映されているという。
蓮華は蓮池から茎を出し、開き始めた花が思い思いの方向に咲いている。蓮華の中から出て来たような菩薩や、左足を蓮華に置いた菩薩思惟像、蓮華の上で交脚して坐す菩薩像などもみられる。仏陀は3段の受花のある蓮華座に結跏扶坐している。
仏陀の蓮華座は素弁であるのに対して、池に咲く蓮華や、他の菩薩たちの蓮華座の蓮弁は、中央に線があるものが多いことだ。 

ところが、マトゥラー仏では蓮華座というものを見付けることはできなかった。

  蓮華座8 古式金銅仏篇← →蓮華座10 蓮華はインダス文明期から?


関連項目
蓮華座1 飛鳥時代
蓮華座2 法隆寺献納金銅仏
蓮華座3 伝橘夫人念持仏とその厨子
蓮華座4 韓半島三国時代
蓮華座5 龍と蓮華
蓮華座6 中国篇
蓮華座7 中国石窟篇
蓮華座11 蓮華座は西方世界との接触から

※参考文献
「シルクロード 華麗なる植物文様の世界」 古代オリエント博物館編 2006年 山川出版社
「平山郁夫コレクション ガンダーラとシルクロードの美術展図録」 2002年 朝日新聞社
「パキスタン・ガンダーラ彫刻展図録」 2002年 NHK
「インド・マトゥラー彫刻展図録」 2002年 NHK